子どもの口呼吸がもたらす影響と改善法

口呼吸

近年、子どもの口呼吸(こうこきゅう)が増えています。口呼吸が癖になると、歯並びの悪化や虫歯、口臭などさまざまな弊害を起こしやすくなります。
また、フィルターとなる鼻を通さず、空気が体内に入ってしまうため、感染症やアレルギーを引き起こす原因にもなるのです。
したがって、口呼吸は治療やセルフケアを通して改善を目指すことを強くおすすめします。

口呼吸が疑われる状態とは

お子さんが以下の様な傾向にある場合、口呼吸になっている可能性があります。

上唇が下唇よりも白くなりやすい

唇の色は口呼吸を見分ける目安の一つです。
通常、唇の色は上下同じのはずですが、口呼吸をしている子供の場合、ずっと口を開けているので慢性的に上唇が乾燥して白くなっていたり、唇が厚くなり肌との境界線があいまいになっています。

唇をなめている

唇が乾燥するのが気になって、よく唇をなめる仕草をします。

前歯の先端に汚れがつきやすい

口をポカンと開けているのでいつも前歯が乾燥しており、茶渋などの色汚れがつきやすくなります。
そのため、前歯の先端が色素沈着で汚れる傾向が見られます。

発音が不明瞭で活舌が悪い

舌が前に出ていて口呼吸になっている場合、発音が不明瞭で活舌が悪くなる傾向にあります。

猫背

猫背の場合、空気の通り道が狭くなり肺を圧迫して呼吸が浅くなる傾向に。
こうした姿勢の悪い状態も口呼吸に関連していることがあるのです。

口呼吸がなぜ良くないのか

口で呼吸すると、様々な弊害がでてきます。人間は本来、鼻で呼吸するのですが、口で呼吸を行うことで、次のような悪影響が起こる恐れがあります。

虫歯・歯周病のリスクが高まる

口で呼吸すると、口の中が乾きやすくなり、細菌が唾液によって洗い流せず繁殖しやすい状態になります。そうなると虫歯や歯周病のリスクが高くなるのです。

歯並び・あごの形に影響する

口呼吸をしていると、口で呼吸がしやすいような歯並び、あごの形になっていきます。口呼吸を放置していると「アデノイド顔貌」と呼ばれる、特有の顔つきになる場合があります。

風邪をひきやすくなる

鼻で呼吸をすると、鼻毛や鼻の中の粘液がフィルターとなって、外部から侵入した細菌やウイルスをキャッチして、体内に入れないようにする仕組みになっています。
一方、口呼吸の場合、フィルターとなるものがないため、のどの粘膜に細菌やウイルスが定着しやすく、風邪などの感染症にかかりやすくなってしまうのです。

口臭

口の中の唾液が乾くと、細菌が繁殖しやすい環境となるため、口臭が強くなります。

いびきや無呼吸症候群を起こしやすい

舌は上のあごの前歯の裏側にあるのが普通です。しかし、口呼吸をしていると舌の位置も口呼吸がしやすいように低い位置にいってしまいます。
そうなると、舌の後方がのど側に落ち込んだ状態になり、気道が狭くなり、いびきの原因や無呼吸症候群を引き起こしてしまうのです。

集中力がなくなる

口呼吸は脳にも影響を与えます。脳下垂体が吸気で十分に冷却されないために頭がボーっとして集中力が低下してしまいます。

どうして口呼吸になってしまうのか

口呼吸は上記のようにさまざまなデメリットがあります。
どうして口呼吸になってしまうのか、その原因を見つけていきましょう。

鼻炎、アデノイドなど

人は通常、鼻で呼吸をしていますが、風邪やアレルギー性鼻炎による鼻づまりによって息苦しさから口呼吸になってしまいます。
特に慢性鼻炎を持つ子どもの場合、口呼吸が癖になってしまい、口を閉じる力が弱くなってしまうことも。
アデノイドとは、鼻の奥にあるリンパ組織の塊のことです。アデノイドとは2歳ごろから大きくなり始め、5~6歳で最大になり、10歳ごろには小さくなっていきます。
アデノイドが最も大きくなる5~6歳の時期は、あごの骨格が小さいため、鼻呼吸がしづらく口呼吸になりやすくなるのです。

口の筋肉が未発達

「柔らかいものばかり食べる」「よく噛まない」「口呼吸が癖になっている」と、口回りの筋肉である口論筋の筋力が低下してしまいます。
口輪筋の筋力が落ちると、口を開けっ放しになる「ポカン口」が癖になってしまうのです。
昔より口輪筋を鍛える機会が減ったため、口呼吸の子どもが増えている傾向にあります。

肥満

肥満により脂肪が増えると、あごの周りや首、のどの中、舌にまで脂肪がついて太くなっていきます。
そのため、気道が圧迫され口呼吸になりやすくなるのです。
また、いびきをかいているときは口呼吸となっています。

他にも歯並びやアゴの形が原因で口が閉じにくい、口唇閉鎖力(唇を閉じる力)が弱いなどの理由で口呼吸となってしまいます。

口呼吸を引き起こしてしまう育児とは

口呼吸を引き起こしてしまうと考えられる原因は以下の通りです。

離乳食を始める時期が早い

離乳食を始める時期が早いと口呼吸を引き起こしてしまいます。
離乳食を始める時期について母子手帳には「生後5~6か月後を目安に」と記載されているはずです。
あまりに早い時期に離乳食を始めてしまうと、口腔機能の発育が止まってしまいます。
授乳期は舌の力を使ってお母さんのおっぱいを飲むのですが、離乳食は飲みこみやすいように調理されているため、舌の力を使わなくても飲みこめるようになってしまいます。
早めの離乳食は舌や口腔内の筋肉に十分な力が付かない原因です。

前歯で噛ませていない

次に離乳食を前歯で引きちぎる動作をさせていないことです。
前歯を使うことで、力がかかり上あごや奥歯の骨の成長が促進されます。
なるべく歯や舌の筋肉を使わせることで、赤ちゃんの口腔機能が発達していき、鼻呼吸につながるのです。

舌や口回りのなど口腔機能の発育・発達のための食事がされていない

口腔機能の発育・発達のための食事というのは、前歯で噛み切ってよく噛んで食べる、適切な大きさと固さのある食事のことです。
一般的な離乳食は食べやすさを基準にして考えられています。
そして、子どもが大きくなるとハンバーグやオムライス、カレーライス、ラーメンなど、子どもが好むメニューになり、食べやすさを第一に考えた料理になりがちです。
しかし、これらの食事は柔らかいので、噛まなくても飲みこめるものばかりです。
そうしないとよく噛んで食べるという習慣が身につかないため、口腔機能が発達せず、口呼吸の原因になってしまいます。
子どもにとって舌やあごの発育を促すような食事が大切です。

隠れ口呼吸に要注意

一見口を閉じているように見えても、口をしっかり閉じておらず上下の唇が1㎜以上開いていれば口呼吸をしています。
これを隠れ口呼吸といい、多くの子どもは隠れ口呼吸をしているそうです。

口呼吸のまま大人になるとどうなる?

口呼吸が治らないまま大人になった場合、かみ合わせが悪くなり、噛みしめや歯ぎしりなどが起こります。
噛みしめや歯ぎしりが起こると、歯がしみやすくなり、虫歯でないのに歯に痛みが出たりすることも。
また、口呼吸によって舌の位置が下がっているため、歯並びが悪くなります。
歯並びの悪さは噛みしめの原因です。あごの筋肉が常に緊張し、無意識でも噛みしめてしまい、歯がすり減り、歯周病のリスクも高まります。

口呼吸で起こりやすいアデノイド顔貌

アデノイド顔貌とはアデノイドが大きくなったため現れる顔の特徴を指します。
アデノイド顔貌は口元が前に出ている、二重顎になりやすい、あごと首の境目がわかりにくくなるなどの特徴が現れます。
一般的にはアデノイドの肥大によって顔に現れた特徴のほかに、口呼吸が原因で顔の特徴全体を指してアデノイド顔貌と呼ばれることが多いようです。
アデノイド顔貌で気になるのという人のほとんどは、その見た目をコンプレックスとして捉えます。
アンガールズの山根さんやバナナマンの日村さん、元嵐の櫻井翔さん、松本潤さんがアデノイド顔貌の代表例です。

口呼吸を改善するには

口呼吸を改善するには以下の方法があります。

鼻呼吸テープを使う

ドラッグストアでは鼻呼吸がしやすくなる鼻呼吸テープが販売されています。
寝る前に鼻呼吸テープを貼ってみましょう。この方法は鼻呼吸ができるけど、ポカン口になっている子供に有効です。

口呼吸改善のためのトレーニング

口呼吸を改善するには口の周りの筋肉と舌の筋肉を鍛えることが有効です。

あいうべ体操
福岡市のみらいクリニック院長の今井一彰先生が提唱された口周りや舌周りの筋肉を鍛える体操です。
体操といっても体を動かすのではなく、顔を使った体操なのでどこでも、いつでも、誰でもできます。
やり方について以下の動作を繰り返します。声は出さなくても構いません。

  1. 「あー」と口を大きく開く
  2. 「いー」と口を大きく横に広げる
  3. 「うー」と口を強く前に突き出す
  4. 「べー」と舌を突き出して舌に伸ばす

1~4を1セットとして、1日30セットを目標に毎日続けます。
続けることで、舌力がついて自然と口を閉じることができるようになります。口を閉じるということは鼻呼吸ができているということです。

気になる場合は耳鼻咽喉科や小児歯科へ

子どもの口呼吸の多くは鼻や口に原因があります。単なる癖ではないため「ちゃんと口を閉じなさい」と注意しても解決しません。
口呼吸にはさまざまな原因が絡み合っているので、少しでも気になったら耳鼻咽喉科や小児歯科へ相談してみてください。
根本的な原因を探り、しっかり対応することが大切です。

まとめ

口呼吸を放っておくと、虫歯や歯周病、風邪のリスクを高めるほかに口臭にもつながるなど、さまざまな悪影響を及ぼします。
さらに、歯並びが悪くして、表情筋を弱くする原因になるため、見た目にもリスクのある呼吸法です。
だからといって、子ども本人に言い聞かせれば治せる症状ではありません。
必要に応じた治療を行うことで自然に鼻呼吸ができるように環境を整えてあげることが大切です。